巻頭言 | ネットワーク医療と人権 (MARS)

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巻頭言


今、世の中には「3D」が飛び交っている。映画、テレビ、レコーダー、PC、カメラ、携帯電話、・・・。ところが先日観た映画では、あまりに「3D」を強調した映像ばかりで、肝心のストーリーが薄いものとなってしまい、一種の切なさすら感じてしまった。

過去に機械設計を生業とした経験があるが、当時は二次元CADが導入されたばかりで、設計図(組立図や部品図)は正面図、側面図、上面図と、少なくとも3方向の図面を揃えて初めて、製造現場に渡すことになっていた。今や時代が大きく進化し、三次元CAD(Computer Aided Design)を駆使しながらモノ作りができるようになっている。作りたいモノをあらゆる角度から見ることができるだけではなく、強度計算や製造ラインへ直接データが送れるようにもなっている。

モノというのは正面から見たところで、その裏側や横顔は分かるはずもなく、ましてや、どんな姿なのかイメージできないのは当たり前のことである。機械設計屋という昔を思い出しながら、最近の出来事やニュースなどを見ていると、あまりに偏った方向からしか物事を見ていないことが多いと思う。そしてまた自分自身の考え方や行動についても省みることが多い。

「多様な***」を認め、意識できても、そういう物事・人・考え方を、どの位置から、どれくらいの距離から、どのように見て、どう扱うか、「3D」CADほど簡単ではない。モノ作りに限らず、どんなことであっても、全体像を掴みながら、そして中身や本質について考慮した上で、自分の振る舞いを考える必要があると思う。

 

2010年12月
特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権
理事長 若生 治友