講演2 | ネットワーク医療と人権 (MARS)

Newsletter
ニュースレター

講演2

「市民目線からの自粛・行動変容とワクチン」

東北大学大学院 医学系研究科・医療倫理学分野 准教授 大北 全俊

 

私の方からは花井さんのように数字と事実を示しながら情報を伝えるというよりも、あくまで素人的な市民目線で、今回の(コロナ)対策の中心となった行動変容や自粛はどういったものだったのかを考えたいと思います。感想と言えば感想に過ぎないかなと思います。

 

本日の試み

 「記述を試みる」と書いていますが、これは哲学倫理学を背景にしていて、人が言っている概念や枠組みを参考にしながら、「こういうふうにも言えるんじゃないか」という私なりの見方を提示するものです。エビデンスに基づいて「こう考えるべきだ」というタイプの話ではないので、皆さんなりに「それは違うよ」「こういうふうに考えるべきだよ」というのがあれば、提示いただければ幸いですし、その足掛かりにさせていただければと思います。

緊急事態宣言の発出

 こちらは安倍元首相の発言ですが、最初の緊急事態宣言について考えたいと思います。2020年4月7日「全国的かつ急速な蔓延状態ではないが医療提供体制が逼迫している地域がある」ので、このままいくと「国民生活及び国民経済への甚大な影響」があると、ここまでは新型インフルエンザ等対策特別特措法(特措法)の文言とほぼと同じで、「医療への負荷を抑えるために感染者数を拡大させないこと」 「そのためには何よりも国民の皆様の行動変容、つまり、行動を変えることが大切です」、そのあとに8割削減、三密回避といったことが首相から呼びかけられたのが最初の緊急事態宣言だったと思います。
 行動変容という言葉は、そのあとの緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の時には使われていないので、あまりこの用語にこだわるのもどうかと思うのですが、自粛と言われて実質求められているものは行動変容です。今日集まりいただいた皆様は、HIV対策や研究に長らく関わってきた方が多いと思います。私もその端くれですが、HIV対策や研究においては行動変容という用語に馴染みがあると思いますが、一般社会で普通に使われていた用語ではないと思います。
 行動変容、言い換えると、リスク・マネジメントということが、そのまま首相から直接的に国民に呼びかけられるということはどういうことなのか、それがこの宣言に触れた時に私が最初に引っかかったところでした。海外、主にヨーロッパではロックダウンという形で明確な行動の強制的制限がとられていて、その対策と非常に対照的だなと思いました。それについての議論も報道等で色々となされているところだと思います。


続きを読む

賛助会員登録をお願いします

賛助会員の申し込みはこちら