講演1 | ネットワーク医療と人権 (MARS)

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講演1

「日本の医療システムの見取り図、公衆衛生、医療資源
そして感染症法の観点から」

特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権 理事 花井 十伍

はじめに

 患者目線、市民目線からの話をいたします。患者としては、HIV感染者として、HIVとの付き合いが長く続いています。また1週間くらい前にコロナウイルスに感染してしまいまして、今も待機期間中なので自宅療養の中、そういう意味でも当事者性も加わっている人間としてお話しします。

新型コロナウイルス感染症とHIV/AIDS

 まずは、おさらいをします。新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の病原体はSARS-CoV-2(以下、コロナウイルス)、HIV感染症(AIDS)の場合の病原体はHIVとなります。感染力を比較するとHIVは弱くて、コロナウイルスの場合はかなり強いということになります。
 ウイルスの生存期間に関しても、HIVは弱くてコロナウイルスは非常に強いため、コロナウイルスはアクリル板などに付着して完全に不活化するまでの時間は長いのです。HIVの場合は、乾燥した空気に触れただけでも感染力も病原性も失うと言われています。
 感染ルートですが、コロナウイルスは飛沫・エアロゾル、そして排泄物で感染します。HIVは血液や性交渉で感染しますので、基本的には性感染症となります。
 潜伏期間は、コロナウイルスの場合、国立感染症研究所の論文によれば1日から一週間で中央値が3日といわれています。隔離期間7-10日間といわれるのは、このような根拠によってコロナウイルスの潜伏期間を考えて設定されています。HIVの場合は、半年から15年くらいとなっていて、治療を受けていないと発症して9割以上が死亡するということになっています。一方COVID-19は死亡率が低いということになります。
 つまりウイルスの生存戦略から考えるとHIVはすぐに宿主を死に至らしめないかわりに、ゆっくりと感染を広げていくわけですが、コロナウイルスは、感染しても必ずしも症状が出ませんので、その間に急激に感染を広めていくという戦略を取っていると思います。

 

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