巻頭言 | ネットワーク医療と人権 (MARS)

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巻頭言


先日、約10年ぶりにヨーロッパの土を踏んだ。そこはパリ。世界血友病連盟(WFH)の「2012 World Congress」に参加することが一つの理由であったが、個人的には有名な美術館を巡ることが大きな目的でもあった。

そんな中、タイミングよく日本を旅立つ前に「ミッドナイト イン パリ」(ウディ・アレン監督)が上映され、全編パリ随所が描かれているので、ほんの軽い気持ちで観に行った。ウディ・アレン独特の奇知に富んだユーモアたっぷりのロマンティック・コメディである。

パリ旅行に来ていた主人公は、現世に嫌気が差していて、真夜中になるたび約100年前のパリにトリップするのであった。そこで出会う著名な人々や魅力的なヒロインに振り回されていく。主人公はトリップした過去の時代を現代とは異なる「黄金時代」と呼んで気分を高揚させるが、そこで出会うヒロインは、その時代に嫌気が差していて、さらに100年前を黄金時代と呼んでいるところが何とも皮肉的である。

奇想天外なストーリーではあるが、ふと今の私たちの周りを振り返って考えてみると、100年後の未来の人々から現代(2010年代)を「黄金時代」と呼んでもらえるだろうか。はなはだ疑問符が飛び回っていると感じてしまう。どうしようもない閉塞感があり、さまざまな問題が山積みで、何から手をつけていいのか分らない。原発問題に象徴されるような、「専門家が答えを出せない問題に社会がどのように応えるのか」という問いに、いろいろな場面で遭遇する。

次元や分野は異なっても、これまでのNPO活動の中で問い続けている課題と全く同様であると思う。現代社会が私たちに問い続けているということに自覚的でありたいし、微力ではあってもMERSとして問題提起できることは多くの人たちに訴え続けていきたいと思う。

 

2012年8月
特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権
理事長 若生 治友