≪筆者≫ ケアーズ事務局
これまでケアーズは、血友病患者・家族の救援団体として1992年10月から活動してきました。その活動内容の大きな柱として薬害HIV訴訟の支援があり、患者・家族の相談や救援依頼に対応する一方で、原告団とともに要請行動に参加したこともありました。やがて1996年3月にHIV訴訟は和解しますが、そこに至るまでには原告の方々の並々ならぬ努力と勇気ある決断があったことと思います。そして、和解から約4年半が経過し、さらに大阪HIV訴訟原告団は大きな決断をされたと思います。二度と薬害を起こさない社会の実現を目指して、新しい組織を立ち上げたことに心から敬意を表します。
最近では、薬害エイズは過去のものという見方をする人がいますが、決してすべてが終わったわけではありません。現在、元ミドリ十字(2000年10月現在、ウェルファイド)の歴代三社長、元厚生省薬務局長、元帝京大学副学長でエイズ研究班長であった安部英に対する刑事裁判が係争中ですが、これらの裁判審理によって、薬害エイズの真相はどこまで解明できているのでしょうか。薬害エイズ事件が構造薬害とするならば、その真相究明は多角的に検証されなければなりません。さらに、検証によって導き出された構造やシステムの欠陥をどの様に改善して薬害再発防止につなげていくのかが提言されなければなりません。そういった意味では、薬害エイズの真相究明は、薬害根絶の出発点にしかすぎないと言えるでしょう。
このたび「ネットワーク医療と人権」が、薬害根絶を掲げて社会を改善していくために設立されたことは、日本にとっても大きな意義のあることだと思います。薬害エイズの真相究明や検証作業を活動の原点として、今後さまざまなプロジェクトを展開されていくことと思いますが、事業遂行には、幾多の困難が予想されます。ケアーズとして成し得なかったことも多く、その成果を心から期待しています。
改めて貴会の理念・目的にケアーズは賛同し、今後とも惜しみない協力をしていきたいと考えています。これからの貴会の大いなる発展を願って、設立へのメッセージと致します。