講演3 | ネットワーク医療と人権 (MARS)

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講演3

「薬害エイズ被害者の活動と社会正義」

特定非営利活動法人ネットワーク医療と人権 理事 花井 十伍

若生氏:
 大北さんありがとうございました。盛山さんと大北さんの話を受けて花井さんの方から少しお願いいたします。

花井氏:
 盛山さんのお話ではかなり体系だったところを勉強させていただいた感じですし、大北さんからはシモーヌ・ヴェイユのお話として、何か忘れてはいけないものを示唆されたように感じました。
 私からは、まず薬害エイズ被害者である私たちが日頃どういう活動をしているかをご紹介して、またお二人のお話にかえっていきたいと思います。

ウルトラセブンの正義

 ここにウルトラセブンを出しているのは、ウルトラセブンが最後は正義に準じなかったというところからきています。一見正義のヒーローだけれども、最後は個人的な理由で命をかけたという最終回の物語があって、昭和の古いヒーロー・ウルトラセブンも正義を貫けなかったという、そういった話から今回はこのウルトラ警備隊のマークを使っています。1960 年代生まれの僕たちの世代が子どものころに観たヒーローものは必ず巨悪に立ち向かう完全懲悪物語で、そういう感覚が刷り込まれているのですが、その中にあってウルトラセブン(の物語)だけは、ウルトラ警備隊の隊長が地球の原住民を滅ぼして悪辣に笑うというような、人類の側が正しいのかよくわからないような展開が多くありました。そういう宙ぶらりん感を子ども心に感じてから長い年月を経て、こういう企画を思いつくきっかけとなりました。

薬害エイズとは

 薬害エイズというのは血液製剤によ る HIV 感 染 の こ と で、HIV は 普通、性感染症なのですが、「薬害」と
称されるのは医薬品としての血液製剤にウィルスが混入していたからです。血液製剤にはいろいろ種類がありますが、主に血友病患者集団が使っていた製剤にだけ感染力を持ったままのウィルスが入っていたのです。結果的に血友病という小さな集団、5000 人ほどの集団にアメリカから輸入された製剤によって直接ウィルスがもたらされて、約 30%が HIV に感染してしまいました。HIV は、今の新型コロナウィルスのように、1980 年代初頭に突如登場して世界に驚きを与えた新しいウィルスだったわけですが、約 1500 人の血友病患者が日本での初期感染者集団になりました。これが、「薬害エイズ」ということになるのは、単に自然現象ではなくて、人為的に何らかの不正があったのではないかということを提示し、民事訴訟を行ったからです。

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