昨年は、実家を処分するために、いろいろと整理し、片付けをし、廃棄業者を頼むなどしていた。私の親、特に母親は、昭和ヒトケタのいわゆる「捨てられない世代」であったので、呆れるくらい雑多なものを残し他界していった。残された家族(姉、私)にすれば、全く価値のない物(=ほぼゴミ)が大半で、しかも気が遠くなるほどの量であった。
父親は漫画家:手塚治虫* の作品を好み、処分する“ブツ” の中には手塚作品も数多く混じっていた。その中に手塚氏のライフワークであり、未完の「火の鳥」(全12 巻)があった。このたび改めてじっくり読むことにし、廃棄せずにいた。私自身、子どもの頃にそれらを読んでいたはずなのだが、いざ手に取って開いていくと、あまりにも内容が深淵かつ濃いために、なかなか読み進むことができなかった。
「火の鳥」シリーズは、これまでも数々の実写映画やアニメ、ゲームなどが作られているので、ストーリーや詳細は省くが、各作品(番号ではなく「**編」で構成されている)に共通して、生と死、そして生まれ変わりをテーマしながら、古代、現代、未来を行き来し、それぞれの「編」が繋がっていく。読み進めるうちに、次第に手塚氏の見事な「企み」、「無限ループ」にハマっていく。
まだ全巻を読み終えたわけではないが、「火の鳥」の壮大なスケール感に圧倒された。恥ずかしながらようやく手塚氏の描こうとしたことのほんの一端に触れたよう気がした。
*手塚治虫:1928 - 1989、享年60
2019 年1 月
特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権
理事長 若生 治友