特集 みんなのくるま | ネットワーク医療と人権 (MARS)

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特集 みんなのくるま

「みんなのくるま2012 参加報告」

特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権 事務局長 池上 正仁

 

みんなのくるま2012
<開催概要>
日時:2012年11月11日(日)10:30~15:30
場所:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 高度職業能力開発促進センター(高度ポリテクセンター)
主催:財団法人いしずえ(サリドマイド福祉センター)
協力:特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権、ほか
後援:厚生労働省、ほか
<プログラム>
10:30 開会
10:35 主催者挨拶:唐崎幸雄氏(財団法人いしずえ 専務理事)
(第1部)
10:40 福祉車両の解説:小川英助氏(日本自動車工業会) 
11:00 グループディスカッション
      1.ジョイスティックカー 2.手動車 3.足動車 4.バイク
11:55 第2部のご案内
(第2部)
13:30 展示・説明・同乗見学、免許証取得相談(2輪車のデモンストレーション走行)
15:30 閉会
本イベントのチラシは こちら

はじめに

 立冬を過ぎ、冬本番への気配が感じられる寒い日でした。千葉県幕張の会場に行くと、駐車場への誘導係の方から、丁寧にご案内いただきました。会場へ入ると、車いすや杖を使っている方々が、もうすでにお集まりになっており、開会のときを待っていました。
 私自身、四肢に障がいを持ちながらの運転歴が四半世紀を過ぎ、障がい者が自動車の運転を行うことの素晴らしさを体感しているものとして、今回のイベントへの参加を非常に楽しみにしていました。

第1部 福祉車両の解説・グループディスカッション

 第1部の福祉車両の解説では、その福祉車両が介護用車両と自操式車両に大きく分類されるところから始まり、障がいの部位や程度によって行われる、自操式車両の改造の形式などが詳しく説明されました。またその改造費用の支援や、運転免許証の取得に関わる各種制度などのお話しもあり、市町村によっては、運転免許証取得費用の支援を行っているところもあるとのことでした。
 グループディスカッションでは、「ジョイスティックカー」のグループに入らせていただきました。私自身の障がいの程度は、四輪自動車を運転することにおいて軽度なものなので、運転免許証の条件には「オートマティック車両に限る」というものです。もちろん「手」のみや「足」のみで運転することにも興味はあったのですが、今の自操式の車両の進歩のようすを知りたくて、障がいの程度が非常に重い方でも運転することが可能となる「ジョイスティックカー」のグループに入れていただきました。
 そこでお会いした「ジョイスティックカー」を運転されている方は、筋ジストロフィーの方で、車いすに乗るにも介助を必要とされている方でした。10数年前にアメリカで「ジョイスティックカー」と運命の出会いをされ、車を購入し、アメリカで生活して運転を学ばれたのち、そのマイカーを日本に持ち込み、日本の運転免許試験を受けて免許を取得し、現在に至っているそうです。その方は、車の運転がとても楽しいとおっしゃっていました。まったくもって同感です。障がいがあっても、自分の能力で、自分の車で、自ら運転して出かけることを、とても楽しんでいらっしゃるということを、嬉しそうに話してくださいました。
 まだまだ普及していない「ジョイスティックカー」ですが、今後の日本での普及を心から願います。

第2部 展示・デモンストレーション

 第2部では、まず片手で操作を行うバイクのデモンストレーション走行から始まりましたが、本当に片手で操作しているとは思えないほどのスムーズさで、加速・減速、コーナーリングをしていました。正直、二輪は原付(50cc以下のバイクで、私が運転したことがあるのは、スクータータイプのものです)しか乗ったことがなく、あまり興味はなかったのですが、片手であそこまで操作できることに驚かされました。
 また、展示されていたのは、各種手動車・足動車、車いすのまま乗り込んで運転できるタイプのものなどでした。障がいの部位や程度に合わせて、特殊な装置が取り付けられていました。それらの中で興味を引いたのが、ルーフ(車の天井)に車いすの電動収納庫を取り付けている車でした。今やプリウスを凌ぐ売上台数を誇るハイブリッド自動車アクアのルーフに、車いす収納庫を取り付けたものが展示されていました。ルーフの上のキャリーが、運転席外側にスライドして、車いすを吊り上げて横向きにして収納していました。フックに引っかけたり、きちんとレールに沿っていることさえ目視・手動で確認すれば、電動でキャリーに収納することができていました。難点は車高が高くなるため、立体駐車場にはハイルーフが入るところしか入れられませんということでしたが、そもそも車いすで立駐を使うことは難しいと思いますので、難点というほどでもないのかなと・・・、思いました。
 展示している手動車や足動車も、過去の私のイメージを打ち壊すスタイリッシュなものでした。特殊装置メーカーの努力もあると思いますが、操作性も良いように感じましたし、加えてシンプルできれいなデザインなど、心躍る「みんなのくるま」がありました。

写真と解説

足のみで運転操作する装置の付いたもの。
足でアクセルとブレーキ、左足でハンドルの操作を行う。

 

手のみで運転操作する装置の付いたもの。
右手でハンドル、左手でアクセルとブレーキの操作を行う。

 

車いすを車内に積み込む装置が、天井の下部に取り付けられたもの。

 

車いすのまま車内に乗り込めるように、スロープが取り付けられているもの。
(運転席は左側で、車いすのまま車の運転ができる)

 

上の写真とは違う車ですが、同様に車いすのまま運転位置について、
手のみで運転操作できる装置の付いたもの。

 

トヨタアクア。ルーフ上部に取り付けられている流線型のキャリーの中に、車いすを収納できる。
電動で釣り上げて、横向きに収納する。

 

トヨタアクア。運転席側方の収納装置に吊り下げられた車いす。
このまま上に引き上げられ、横向きになって収納される。

 

トヨタアクア。折りたたまれた車いすが、ルーフの格納庫に入っているようす。

 

日産リーフ。手のみで運転操作できる装置が付いたもの。

 

右手のみで操作できるように、レバーやスイッチが配置されているバイク。

 

ホンダフィットの外観。

 

ホンダフィット。足のみで運転操作できる装置の付いたもの。