巻頭言 | ネットワーク医療と人権 (MARS)

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巻頭言


先日、普段使いの靴を探してショップを巡っている時のこと。その時に私が履いていた靴を店員が見つけて、曰く「そのメーカブランドのデザインは見たことがない」と。それもそのはず、私がその靴を買ったのは、二十歳間もない頃、つまり昭和も終わろうとしている頃だったのだから。私は決して物持ちが良いわけではなく、その靴を履かなくなった時期が10 数年あり、最近久しぶりに履くようになっただけなのである。

そんな風に店員から指摘を受けて、さすが職業柄、餅は餅屋なのだと感じた。目のつけどころが自分とは異なり、仕事上の対象物に自然と視線が行くものだと改めて認識したのである。おそらく世の中の「**専門店」で働く方々も同じように、他人を見る視線は無意識に自分の扱っている商品に向かっているのだと思う。

さて、そんな視線とかプロ意識を持ち合わせているか、自分に置き換えて考えてみると甚だ疑問である。例えば、生きづらさを感じている人へ思いを馳せたり、何となく世の中の「壁」を感じたりした時に、何故生きづらいのか、その理由にすぐに気づく想像力や思考力などを十分に持ち合わせていないと思う。まだまだ力不足で未熟な自分に気づかされることが多い。

MERS としての理念や存在意義を考えると、想像力を十分持ち合わせていない未熟な自分ではいけないと痛感する。世の中の理不尽さや矛盾に敏感であるよう、アンテナの感度を高めなければと気づかされた、そんな出来事を経験した。

 

2016年7月
特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権
理事長 若生 治友