先日、シリーズ50周年となる有名なスパイ映画を観た。物語の中に出てくる武器、通信機などを仕込んだ小物類、なによりハイテク装備のクルマが登場するのも、観るものにとって非常に期待させる映画シリーズである。今回の物語は、原点回帰ともいえるストーリー展開で、かつてシリーズ初期に出てきたクルマが登場するシーンは、驚愕とともに私自身ワクワクしてしまった。しかもラストシーンでは、司令部が50年前の姿にすっかり戻っていて、ファンの心をがっしり鷲掴みする演出となっていた。
また非常に私事ではあるが、つい最近、約20数年ぶりに高校時代の同級生と再会する機会があった。初めて自分の身体のことを他人に打ち明けたのが、その同級生だった。誰もいない、暗くなった夕方の教室で話しかけたのを覚えている。その時に同級生の頬を伝った一筋の涙を今でも忘れていない。今回再会して本音で様々なことを話し合えたのは、20数年前の純粋な気持ちで接することができたからだろう。もちろん、現在その同級生がMERSの活動にも協力してくれていることも事実ではあるが…。
「回帰」する(している)ことが多いと思っていたのだが、映画や様々な出来事を経験して、よけいにその思いが強まった。例えば、血友病患者会ネットワークが法人化され、新たな一歩を踏み出そうとしていること、またHIV医療に関わる人々が増えてきたことで、若い世代に経緯や歴史を再度伝えていく必要があることなど、世間的な流行が一巡して再び流行るという意味ではなく、次の段階へ進むために、今一度原点に立ち戻る必要があると思えることが多かったのである。
みなさんにとって、2012年はどんな「回帰」があっただろうか?
2013年2月
特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権
理事長 若生 治友