巻頭言 | ネットワーク医療と人権 (MARS)

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巻頭言


私は割とSF映画も好きで、子供の頃からよく観ている。いよいよ今年の暮れには超有名な作品の第7部がスタートする。非常に楽しみで待ち遠しい。往年のSF映画は、画面自体の古臭さや特撮技術の苦労がにじみ出ているが、人類への警鐘などの問題意識は非常に優れていると思う。今も様々な作品が作られているが、それぞれにモチーフ、テーマ、時代・舞台を様々に変えたり組み合わせたりしている。中には二番煎じ的な、面白味に欠ける作品もあるが…。

最近、少し先の将来や近未来を描く映画を観て殊更に思うのは、今の社会そのものがSF世界を体現しており、もはやScience「Nonfiction」ではないかということである。例えば、犯人や主人公の情報を探索する技術はすでに開発され、実用化されたりしている。防犯カメラの画像やFacebook、LINE、TwitterなどのSNS上に溢れている写真から顔と名前を識別する技術、携帯電話やスマホ・クルマのGPS機能による行動履歴の把握、各種カードやPOSシステム利用による個々人の購入履歴・嗜好等の情報収集など、枚挙にいとまがない。

これらの技術は、利便性を考えたら必要不可欠な技術やシステムで、私たちに恩恵を与えていることは否定しない。しかしながら、いかに優れた技術であっても、結局使う側の社会や人間次第である。昨今の世相となっている電子マネー・ICカード・ETC・携帯端末の普及、また個人情報の流出事件、マイナンバー制度スタートのニュース等々を見聞きしていると、科学技術の進歩を素直に歓迎できず、一抹の不安を覚えるのは私だけだろうか。

誰かが権限を持った途端に、全ての情報が紐付けされ、一人一人の一挙一頭足が監視される社会に突き進んでいるように思える。このまま無自覚に過ごしていたら、人権とかプライバシーといった言葉は意味をなさなくなるかもしれない。荒唐無稽なSF世界のことではなく、今まさに起きていることだと思う。

 

2015年7月
特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権
理事長 若生 治友