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『薬害とはなにか-新しい薬害の社会学』

 編著:本郷正武、佐藤哲彦 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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本書『薬害とはなにか-新しい薬害の社会学』は、社会学を専攻する文系学部の初学者をはじめ、医薬系学部、健康問題に関心を持つ読者層に薬害の社会学の魅力を伝えるテキストである。これまで薬害問題は、社会学領域で取り上げられることが少なく、2001年に発足した「輸入血液製剤によるHIV 感染問題調査研究委員会」による薬害エイズをめぐる医師や遺族、被害者らの聞き取り調査に端を発した、各種薬害問題の調査研究の蓄積をもって、ようやく社会学領域で薬害が分析対象となったと言える。

とりわけ、海外には存在しない日本固有の「薬害」概念は、さまざまな健康被害を同種の問題として把握可能にするとともに、個々の被害者たちが「薬害被害者」として薬害問題根絶のために連帯するという、公害問題から続く被害者運動の歴史を構成する一助となっている点を社会学的に議論している。

さらには、近年の新型コロナウイルス感染症をめぐっての新薬承認やワクチン接種の問題は、すでに過去の薬害問題が胚胎する問題であると言えることから、今後の考察が待たれるテーマでもある。

このような多岐にわたる論点を、本書では社会学研究者だけではなく、医学・薬学・看護研究者や当事者を含めた学際的な研究チームにより執筆されている。